横田基地は「リサの街」
今日、 僕の頭の中は来週に録音制作するORITO新作の 「リサ:横田基地物語」のことで いっぱい。 この2部構成の10分間以上にわたる長編の戯曲をどうやって、決められた予算と時間の範囲内で首尾よく効率良く録音し編集するか。 働きながら、そんな制作上の実務的&技術的&財務的なことばかり考えていたら、しまいには気が滅入ってきてしまった。 この長編曲をソング・ライトしてデモを作った4年前の頃のような、横田基地とその周辺地域に対する僕なりの「詩的ロマンチシズム」を、見失いそうになった。 「いかん。やばいな。録音直前にこれでは・・。どうしよう・・・。」 「・・・。そうだ!! 久しぶりに今日は横田基地とその周辺へ行こう。リサの街の空気にもう一度触れよう。それが一番だ。そういえば最近はあそこへ行ってなかったなあ。以前はよく行ったのに。」 と思いついた。
車を20分ほど飛ばし、夕暮れの横田基地と福生(ふっさ)市街、つまり「リサの街」に到着。 そのまま「リサの街」を1時間ほどゆっくり車で流した。カー・オーディオで リサ:横田基地物語 のデモを繰り返し繰り返しかけながら。 オーディオから聞えてくる リサ:横田基地物語 のストーリーのなかで繰り広げられる場面の舞台となるスポットを、僕はこの街を周回しながら、ロケハンした。これは楽しい遊びだった。 たとえば、 リサのパパが営む古着屋は、やっぱ国道16号線沿いのこの米軍払い下げのミリタリーウェアのこの店だよな。 リサの家はJR八高線の東福生駅の付近ならリアルかなあ。 リサと恋人の黒人兵士カルヴァンのデートの待ち合わせ場所(曲中ではカルヴァンがいつも2時間も遅刻するんだけど)は、やっぱ福生バーガーのこのカフェだよな。 カルヴァンがセクシーなダンスを踊ってリサをメロメロにするクラブは、やっぱ La Boom しかないでしょ。このクラブ、ほんとに店内から基地の黒人たちの体臭(ファンク)が臭ってきて、まじヤバイよなあ。この店の本物のディープU.S.Aな空気にどっぷり浸かったら、渋谷や心斎橋のクラブなんて薄っぺらくて&かったるくて・・・。 カルヴァンが去っていってから、リサが基地の中を眺め続けて、基地の監視員に睨まれて泣く泣く立ち去っていくのは、やっぱ基地の第2ゲートがぴったしだよなあ。 とまあ、こんな感じ。
土曜日(今日)の午後5時をすぎてあたりが夜のとばりが下り始めると、1週間のお勤めを終えた基地の兵士たちが、基地のゲートから街に羽目をはずしに繰り出してくる。ちょうどそういう時間に居合わせたのはラッキーだった。 そしてやっぱり、いたいた。実物の リサとカルヴァンが!! 身長が190cmはあろうかという筋肉隆々な感じのイカシタ黒人と、その腕にぴったりと抱きついて、メロメロ・ウキウキな20歳くらいの日本人のHip Hop・ストリート系の可愛い女の子がちょうど八高線の踏み切りをこちらに渡ってくるところに出くわす。 僕はあわてて車を切り返して、このカップルをそしらぬ顔で追っかけて、車の窓越しにこの二人の姿に向けて、肉眼カメラのシャッターを パチリ!!パチリ!!と連写した。脳裏に焼き付けた。 「ほらな。やっぱり実在するんだぜ!!リサとカルヴァンは!!」 これに満足して、僕は嬉々として家路についた。 リサの街 の光景を目に焼きつけ、臭いを鼻で嗅ぎ、空気を肌に沁み込ませ、リサ:横田基地物語の音像をもういちど耳に焼き付けた。
この街は自由でいい。そして危なっかしい。 いい意味で 不良 な気分になれる。 そして、なぜだか 悲しい街だ。そこがまた、良い。 それが妙に僕の「詩的ロマンチシズム」と 「文学的・演劇的な表現衝動」を、かき立ててくれる。
あらためて、この街のことをORITOの戯曲として描写したくなった。 リサ:横田基地物語 として。








